2017年11月11日土曜日

従来式AM終段コレクタ変調方式送信機のマイナス変調の計算再現とその原因

随分以前(おそらく1970年頃?)から現在(2017年12月)でも、日本国内では「AM終段コレクタ変調方式」によるAM送信機は大変有名な方式で、現在でも無線技術専門書籍やインターネット上の記事に、その応用回路例が多数見られます。

この方式は「マイナス変調」と呼ばれる現象が発生しやすいことが、実験的、経験的に知られています。僕もこの「マイナス変調」の現象を、高校時代の最初の本格的無線機(設計目標仕様AM出力5W)製作・実験の過程で経験し、ついにこの現象を解決できませんでした。

「マイナス変調」とは、AM送信機にベースベンド変調信号である音声を入力すると、送信キャリア電圧が下がり、変調を深くするほど、そのキャリア電圧の下がり具合が大きくなります。同時に、送信電力も減少します。(音声をマイクへ、しゃべるとRFパワー計の針が下がりました。)

この現象は、トランジスタアンプの動作をA級またはAB級にして、かつトランジスタ負荷インピーダンスの高い小電力回路にして出力を下げると、例えば0.1W〜0.2W程度までは、なんとかプラス変調で動作します。しかし、それ以上の負荷インピーダンスが低い大電力に上げてゆくと、この「マイナス変調」の発生を避けることは不可能になりました。
(これは、実製作と実験で確認しました。)

図1. マイナス変調を起こしているAM送信機の例(BJT TR終段コレクタ変調方式)

図1.には、あえて国内では実用になると言われているC級アンプを構成し、1MH zキャリアを入力し、変調トランスを介して低周波アンプ信号で、終段コレクタ変調をかけてる様子をLTspiceで計算しました。
このように「マイナス変調」現象は、実際の実験と同様に、spice計算でも再現しています。

図1.では、低周波変調を深くかけるほど、無変調時のキャリア電圧よりも変調時の電圧が低くなる現象、変調された送信電力が下がる現象が見られます。

図2. Cクラストランジスタアンプの高周波アンプの歪み発生の過渡解析とFFTスプリアス解析
図2.には、CクラスRFアンプを2N2222で構成し、その電気的動作を、過渡解析および、スプリアスのFFT解析を行った結果を示しました。

Cクラスアンプでは大きな歪みが発生することが電子工学でも基礎知識として良く知られています
図2でもコレクタ電圧は、ほぼ矩形波のような形状にまで歪み、奇数次のスプリアスが強力に出ていることがわかります。

この過渡解析では、高周波での過渡時間解析なので、トランジスタのhFEが、極めて短周期で動的に大きく変化する様子や、コレクタ電圧Vce がベース電圧Vbe より低くなる様子マイナス変調を引き起こす原因となる現象が見られます。

この方式は1970年代に考案されたと思われ、国内の一部の通信機製品に一時期だけ採用されました。この方式はメーカでは短期間で不採用になっていますが、一方、専門技術書籍や実験機作成事例では、現在でも同方式の採用と不具合発生が大変多く続いており、方式課題の存在と解決方法の理解がほとんど進んでいない足踏み状態であることがわかってきました。
今後の設計文化の改善課題の一部と考えます。

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