2015年9月27日日曜日

不思議なAMラジオ検波回路の解析

ラプラス変換を使ったゲルマニウムラジオの解析記事を読みました。[1]
非常に不思議な計算に思えますが、これを好機と前向きにとらえ、ラプラス変換と逆変換を使った検波回路の解析をしてみるのが良いかなと思います。

ラプラス変換を学習または復習できる良いサイトを見つけました。
http://www.jeea.or.jp/course/01.html

ダイオードの物性は、直流特性は良く知られている一方で、私も含め、特に交流特性についてほとんど理解がすすんでいないように思えます。

ダイオードの持っている乗算器に似た物性(ネピア数の指数関数による電圧ー電流特性に基づく)は、数学的計算が失敗している事例も見ました。
ラジオが発明されてもう長い年月がたっていますが、使えてしまっている、実用になるので特に困らないということからか、置き去りにされてきた課題のように考えています。


---対象理論の検証と再現性の確認結果---

図1.1−図1.3に対象理論による伝達関数を用い、AM変調波のダイオード検波が起こるか否かを検証した。その結果、記述された伝達関数によるダイオード検波動作は再現できなかった。


図1.1 伝達関数によるAM変調波のダイオード検波が起こるか否かの検証結果


図1.2  図1.1にFFT解析結果を追加


図1.2  図1.2にFFT解析結果のAM変調波中心周波数近傍を拡大表示


図1.3 図1.1 1.2 のAC解析結果

図1.3 から、600[KHz]への同調動作はしている結果が得られたが、最重要のかなめとなる検波動作による復調電圧は、現在のところは、再現できない結果となった。

上記伝達関数にダイオードの電流式と、ダイオード後のRC並列回路の式が漏れているように考えられる。

ダイオード電流式は、テイラー展開式の近似式で加えれば、伝達関数に盛り込めるかもしれない。
(これは今後の課題とします。)時間の無駄?。



図2.に対象理論の導いた回路図のラジオ動作の過渡解析結果を示した。
AM検波動作は再現できなかった。

図2. 記載されたダイオード検波回路図による回路動作の検証結果



他方のアプローチとして、本ブログで示しているダイオード検波式回路の過渡解析結果、AC解析を、図3〜図4.2に示した。
いずれも期待するAM変調の検波動作が再現した。

図3. 標準的ダイオード検波ラジオ回路の動作確認(期待動作する。)

図4.1 同調回路無しのダイオード検波ラジオ回路の過渡解析・動作確認(期待動作する。)


図4.2 同調回路無しのダイオード検波ラジオ回路のAC解析・動作確認(期待動作する。)

上記結果を比較すると、LTspiceの計算方式が大変優れているように見える。



参考文献:

[1] ラプラス変換を使ったゲルマニウムラジオの解析記事
http://www.yobology.info/text/cristal_radio/cristal_radio.htm
http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/yobology/cristal_radio/cristal_radio.htm

Rev. 0.1 12/18, 2016
検討対象の検波理論の論理検証結果と、回路動作の再現性の確認結果を追記

Rev. 0.2 12/23, 2016
検討対象の検波理論の論理検証結果を再検証。図1.1-1.3改訂と追加。
現在のところ対象理論の再現性に困難が伴う。

Rev.0.3 9/3, 2017
ダイオードは非線型素子で、直流ではi(t)=Is*(exp(V(t)/VT)-1)の電流特性になるが、交流では周波数が上がるほど、高周波を貫通する特性が出てきてしまうので、この式はそのままでは使えない。
ダイオードの非線形特性からは、基本的にはダイオード検波回路を、LTI(Linear Time Invaliant)システムとしての扱いができない。

LTIシステムに近似するには、入力電圧範囲を狭くして、i(t)=K*V(t)のように線形特性に近似すれば、この計算値は直線比例の抵抗となり、周波数変換が発生しないため、ベースバンド信号成分は出す周波数変換動作ができなくなる。

2波の周波数の異なるサイン関数の乗算ではじめて周波数変換が起こるので、ダイオード電流式の指数関数式のテーラー展開近似はどうしても2次電圧乗算式が必須になる。
これは線形でない二次関数以上の関数なので、ダイオード検波回路はけしてLTIシステムに近似できない恐れがある。

H(s)=Laplace{y(t)}/Laplace{u(t)}
入力AM変調電圧:U(t)=Vc(Vdc+Vs*cos(ωs*t)}*sin(ωc*t)
出力検波電圧の近似値:y(t)=K*sin(ωs*t)

と仮定して、伝達関数H(s)が求まる?
ただし、ベースバンド変調波=Vs*cos(ωs)は、一般化すると次のフーリエ級数
x(t)=ΣAi*cos(ωi*t)+Bi*sin(ωi*t) (i=0 to N))
入力関数u(t)が時刻で複雑に非線形に動的に変化するので、一意なるH(s)は求まらないかもしれない。

基礎的には、上記アプローチ法は、ダイオードの存在を無視しているので誤り。
素直にspiceで計算するのが、最も現実に近い精度の高い計算結果になるのが、はっきりしてきたので、そもそも、LTIシステムでないものを伝達関数で計算しようとする考えが、もともとが間違ったものか? 時間の無駄かもしれない。

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高速応答・高純度サイン波発振器

Noboru, Ji1NZL


CWトーン信号生成、モニター用サイン波発振器を、高速応答(高速発振開始)、高純度周波数になるように設計しました。

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スイッチングダイオードの高周波高速スイッチング動作 評価・シミュレーション実験

(1)An attempt to simulate RF diode switch RF signal passed trough but Audio signal in the negative. 
Used LTspice IV (by Linear Technology corp.) Mar. 28, 2015



(2)スイッチングダイオードOFF時の過渡解析



スイッチングダイオード1N4148にバイアス電圧0VでダイオードをOFFして、グランドへ入力信号4mVpepを逃がすと、出力にはほどんど出力は出てこない。
しかし、僅かな電圧の漏れ 42microVpep の微小出力が見られる。


(3)スイッチングダイオードON時の過渡解析



スイッチングダイオード1N4148にバイアス電圧5VでダイオードをONすると、入力信号4mVpepは、1N4148通過時に殆どロスなく、出力に4mVpepの信号が出力される。

中学までの教育で習う整流回路の理解では、この高周波領域の周波数の交流4mVpepをダイオードスイッチング回路がロスなく通過できることを説明できない

中学までの教育ではダイオードは直流動作で一方通行で、逆接続では電流が殆ど流れないと教わる。しかし、ダイオードに直流バイアス電圧が加わった時の高周波周波数領域の高周波電流特性については何も教わらない。
このため、高周波周波数領域では高周波電流がダイオードをほぼ貫通する高周波特性の理解を妨げてしまうと考えられる。
教育の内容では、交流がダイオードを通過すると半波整流された脈流の電圧波形になってしまうが、困ったことに、RFスイッチ回路ではそのような半波整流動作はおこらない。

高校物理では、直流として流れる電子の速度は大変遅く、ゆっくり移動していることを習う。
交流や高周波での電圧の伝わる速度は、こうした電子のゆっくりした流れの往復では説明できず、導体、半導体を伝わる電磁波の波として理解する必要がありそうに思える。
すなわち、高い周波数では電子は見動きできないほどおおまかには光速に近い電磁波の波が伝わることが、おそらく200年前の19世紀には知られていたと思われる。(UKのマックスウェルさん)

ゆっくりと流れる川に高速の石を投げ込むと、波が発生し、波紋が広がる。もしこの波紋の波より水の流れが速ければ、波の模様=波紋は起きないかもしれない。
波の速さが川の水の流れよりずっと速いために、波紋ができるように思える。

似たようなことは空気中でも起こっていて、空気の粒は風で流されるが、それはゆっくりで、音速は風よりもずっと速い。
飛行機は空気を押し出して進むが、音速を超える瞬間に衝撃波が発生する。

同じように、電圧の波の速度が、電子の速度を超える瞬間には、何かの衝撃波が起こるのだろうか?(新たなる謎が生まれた。)



(4)ダイオードスイッチのAC解析

スイッチングダイオード1N4148では、100KHz以上の電波領域の周波数の交流を殆どロスなく通過させ、一方、周波数が低くなるほど利得は減少し、音声領域の低周波はロスが大きく低周波電圧波は通過できない特性が見られる。
RFスイッチとしては通信機に採用されているのはこうしたダイオード交流特性が実用になるからそうなっているのに、この物性も良く知られていないと思われる。

比較的近年になって、この音声低周波領域での利得減少を改善し、歪みを少なくする”オーディオセレクタ”と命名されたデバイス(2009年製品化)が出ているが、これもあまり知られていないと思わわれる。



(5)スイッチングダイオードを簡易アナログ・スイッチとして使う試みは・・・


An attempt to emulate “Diode analog switch”.
RF OSC switching signal leaks to Output. It is impossible to use it. 
Used LTspice IV (by Linear Technology corp.) Mar. 28, 2015

高速スイッチングでは、この簡易アナログ・スイッチはOSC電圧からの漏れが多く、全く実用にならない
この特性も良く知られていないと思われる。
従来のアナログスイッチをスイッチングダイオードで構成することは、現時点では(少なくともこの回路では)出来ない。

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2015年9月26日土曜日

なぜ微分回路、積分回路は、数学的微分積分の値が対応しないのか?

1.微分回路の動作確認

(1)微分回路(HPF)の利得・位相特性

Fc=1/(2*π*R*C)=1/(2*π*10*10^3*0.001*10^(-6))=15.9[KHz]
以上の周波数の交流信号を通過させる。
一方、オペアンプ利得特性から上限の利用可能周波数は、約3[MHz]が上限。

通過帯域= 16[KHz]〜3[MHz]


遮断周波数 Fc [Hz]以下のフィルターされる周波数領域に、ωに比例して利得が直線的に増幅し、かつ位相ずれが90度になっている領域がある。
周波数軸は対数軸になっているが、この直線的利得増加と位相ずれ90度の特性が微分回路と呼ばれるゆえんとなる特性と考えられる。
しかしながら、通過帯域周波数は遮断周波数より上の周波数領域を使用する。このため、この微分回路を利用する実用周波数領域では、微分動作は発生しないことになる。(※1)


(2)500[KHz]サイン波高周波電圧入力時の過渡解析結果




出力信号電圧は、サインを微分した位相90度ずれたコサイン信号にω=2*π*500x10^3を乗算した電圧値を期待したいが、そう成るには、ωを乗算しなければならない。しかし、周波数に比例して出力電圧を上げることはこの回路では不可能なので、数学的な微分演算は原理的に出来ない。


不明点:何故、この回路を微分回路と呼ぶのだろうか?

(※1) -> 遮断周波数以下の利用されない周波数領域で微分動作が起こることが判明した。
(Oct.4, 2015)


(3)矩形波信号入力時の過渡解析結果




数学的には、矩形波立ち上がりで、電圧最大値+12Vを期待したいが、出力電圧瞬時値=2.0[V]の時間幅の狭いパルス信号しか得られない。数学的微分動作は無理そうである。
矩形波の立ち下がりも同様、電圧値最小値-12Cを期待したいが、出力電圧瞬時値=-2.0[V]の狭い矩形波の狭いパルス信号しか得られない。同様に、数学的微分動作は無理という結果となった。


不明点:結局、微分回路と呼ばれるものは、HPF(High Pass Filter)と解釈して利用するしかないのだろうか?


2.積分回路の動作

Fc=1/(2*π*R*C)=1/(2*π*10*10^3*0.005*10^(-6))=3.18[KHz]
以下の周波数の交流信号を通過させる。

(1)1[KHz]サイン波電圧入力時の過渡解析結果
数学的積分では、定積分を連想させるが、どの区間の時刻の面積を求めているのかわからない。

不明点:何故、この回路を積分回路と呼ぶのだろうか?



出力信号は、位相が90度ずれているのは雰囲気として積分関数演算を連想させるが、数学的には、ωで除算した出力値にならねばならない。しかし、ωは周波数に比例して変化するのでそうした倍率を周波数に合わせて変化させるのは、この回路では数学的積分は出来ない。
また電圧の初期値も数学の演算値とは全く合わない。


(2)500[Hz]矩形波電圧入力時の過渡解析結果

数学的積分では、矩形波の面積を定積分することになるが、定積分すべき時間区間がわからない。波形は三角波に近づけば正しい結果のようにも思えるが、ωで除算するのが数学的積分なのに、電圧利得が固定になるので、数学的定積分は回路原理的に無理である。
出力電圧の初期値も数学的計算値とは全く合わない。

不明点:結局、積分回路と呼ばれるものは、LPF(Low Pass Filter)と解釈して利用するしかないのだろうか?

低い周波数領域のLPF帯域内では180度位相が一定して反転する。
Fcをかなり上回ると、90度位相が一定にずれるという興味深い位相特性が見られる。
ただし利得は対数表現の周波数に対して、直線的に減少している。この領域では、積分動作が起こっている。(※2)

電気回路で言われてきている微分回路、積分回路としては、これで期待動作なのかもしれないが、数学的微分、数学的積分とは計算が全く合わない。なぜこんなことになっているのだろう。この点、アナログコンピュータの微分・積分回路の動作はどうなのだろう?

※1,※2 -> 
意外なことに、遮断周波数を堺にした通過周波数帯域外に、微分動作、積分動作する領域があることが判明した。

なんと、HPF, LPF として利用する周波数通過帯域の外側に、微分、積分の演算動作領域がある。
すなわち、微分回路、積分回路と呼ばれる演算を期待する場合は、遮断周波数を境にした通過帯域外の周波数でこれらの回路を、微分演算、積分演算に利用できることが明らかになってきた。

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低雑音AGC制御アンプが飽和する現象(失敗設計と成功事例)


図1. AGCアンプの暫定テスト

オペアンプのAGC(Automatic Gain Control)制御方法を調べるため、只今、この回路をテスト中です。

図2. 飽和したAGCアンプ

ひとまず、455KHz IF AMPに使えるか、AM変調波を入力してみました。
その結果は思わしくなく、AGCが効かず、OPアンプが飽和してしまいます

解説記事を書く出版者や著者は、回路を紹介する場合、動作の目標仕様(扱う周波数、電圧範囲、時定数等)と、方式を明確化しないと、読み手には多くの時間とコストのロスが発生すると感じました。
この回路は不運にもお勧めできない結果となりましたが、失敗を繰り返さないための教訓になると思います。

OPアンプのAGC制御がうまくいっている例
OPアンプによるWeen Bridge発振回路
https://ji1nzl-official.blogspot.jp/2015/09/ween-bridge.html
FETの抵抗変化特性を使い振幅電圧を一定にする例


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2/12/2017: AGCアンプ飽和結果について記事追加

CQ出版社が新方式高性能AM送信機を発表

トラ技 電子工作部品セット(ポータブルAMトランスミッタ)
 http://shop.cqpub.co.jp/hanbai/books/I/I000151.html 




1MHzのAM送信機、わずか1.5Vの電源電圧で、高品位のAM変調ができています。
それは素晴らしいです。

回路の動き方
(1)構成
 ①Q1 2SC1815 による 1MHz 発振器
 ➁Q2,Q3,Q4 2SC1815 x 3 個によるギルバートセル型乗算器
 ➂Q5 2SC1815によるAM変調用DC電圧源
 ➃Vin 1KHz サイン波低周波電圧源
(2)動き
 ①のLC発振器による1MHzサイン波がC3を通じてギルバートセル乗算器へ入力される。
 Q5で発生させたDC電圧をギルバートセル乗算器Q4のベース端子に加わる。
 ➃の1KHzサイン低周波電圧信号が、Q4のベースに重畳されてギルバートセル乗算器に加わる。
 上記発振器電圧と、DC電圧で底上げされた1KHzサイン波が乗算器に加わる。
 乗算器で上記2信号が乗算されると、AM変調信号が生成され、Q3の負荷(L2+R8)にAM変調電圧信号が現れる。

応用: 
現在まで、スーパーヘテロダインラジオとして市販されてきたラジオのミキサーは、乗算器という概念が無く、トランジスタ1石で局発信号でスイッチング動作させるような動作をさせてきたようです。
上のギルバートセル型の乗算器をこうしたラジオに適用すれば、もっと性能の良いラジオができたろうと思われます。
一方、IC化されたラジオでは既にギルバートセル型乗算器が組み込まれたミキサーが利用されていました。いかに国内のラジオ・通信関係の教育が遅れているか、業界はとっくの昔にこのミキサー技術を実装していたのに、業界の持つ知識・技術が教育や専門書に降りてきていない設計文化の大きなギャップがありそうです。
 
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SDRで使われるアナログ・スイッチを使ったSSB送信機の例

Noboru, Ji1NZL

これは74VHC4066で動作確認のとれている回路で、パソコンサウンドボードから、I,Q信号を入力しSSB変調電波を送信するSSB送信機の設計例です。
1[KHz]の低周波変調を入力しています。


位相制御が非常にやさしく、BPFを通過させると十分スプリアスの少ないSSB送信機を実現できます。

PSN式SSB変調器の計算実験(LTspice)


G11/Gnu Based PowerSDR2.0 SSB Transceiver application example


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2015年9月23日水曜日

【再挑戦】NHK 再放送(2012) バケツラジオをスピーカで受信したい(改良)

無電源で、NHK総合ラジオを聞けるよう、NHK 再放送(2012) バケツラジオの製作を挑戦したく思います。


回路を変更し、最適化しました。
受信する設計上の見込みが出てきましたので、製作する意欲が出てきました。



参考資料

マルチバーアンテナ式ゲルマニウムラジオ

https://www.youtube.com/watch?v=Y3IFMcAyrn0


100均スピーカを改造して電池・外部アンテナが要らないゲルマラジオ(無電源ラジオ)を聞いてみた


ゲルマニウムラジオでスピーカーを鳴らす


聞こえなかった組み立て式ラジオ・キット【学研 科学】

1. 学研の科学誌 小学六年生 付録のゲルマニウム・ラジオ 

(写真:引用はインターネットGoogle画像検索から。引用として掲載。)

小学六年生の時、学研社の”科学”誌にゲルマニウム・ラジオ(英語:Crystal Radio)の付録号がありました。1ヶ月前に次の号の付録予告があり、この付録の号が到着するのを心待ちに胸をワクワクさせていました。

到着次第組み立てたのですが、放送局が受信されることは、とうとう最後までありませんでした。
再現性に難があり、そもそもがキットの設計ミス、と現在では考えています。
このラジオの難しいのはLC同調が難しい構造にあります。

①バリコンは(僕の記憶によると)2枚の金属版の間にポリビニールの薄い絶縁袋をはさめて、そのビニル袋の中を一枚の金属板をスライドさせる構造でした。

この構造では正確で安定した静電容量を持たせることは困難と思っています。当時、既にポリバリコンがあったのでそれを部品とすべきではなかったか、と思います。

➁スパイダーコイル
 これは手巻きですので、コイルのインダクタンス値にばらつきが出てしまいます。当時バーアンテナが部品として売られていたので、そのほうが再現性、感度ともに良好なものとなる、と思います。

小学6年生の知識と思考の全力を尽くして、僕は必死でこのラジオで放送を受信しようと毎日頑張ったのですが、とうとう最期までラジオ放送は受信されませんでした。

やったこと(の記憶)

(1)アンテナを長〜く引き回した。

高感度のアンテナが重要ということで、エナメル線、ビニール線、とにかく長く、高く引き回しました・・・が、聞こえませんでした。

(2)アースを接地した。

庭に穴をほって、買ってきた釘(くぎ)を地中に埋めて、ラジオのアース側へ接続しました。

(3)VHFテレビのアンテナのフィーダー線の片方を、ラジオにつないでみました。

結局、このラジオは、放送局が何も聞こえませんでした。


次の手:

2.  スーパーヘテロダイン・ラジオ 8石キット組み立てへの挑戦

僕と友達の子供らに大人気だった近くの貸本屋・模型店さんが店じまいという話で、大人気の閉店セールがありました。スーパーヘテロダイン・ラジオ8石キットが半額になり、約4000円弱で購入できました。

これは当時の僕の1年分?のおこづかいに相当するもので、両親のためにも、僕の命運をかけた挑戦になりました。(当時の大学初任給は4万円以下?)
ところが、このラジオも放送らしきものを受信する場合も稀にあったのですが、受信感度が非常に悪く、ウー、ピー、ギャーと鳴っていて、結果は最悪でした。

父の大切に持ち運びしていたナショナル社のポータブルラジオを内緒で分解して、どのような配線になっているかも調べました。
配線を真似て、はんだめっきをはんだごてでやってみましたが・・・(NG)(;_;)。

このラジオキットも高額ではあったものの、今になって考えると設計不良品であったと考えています。当時の僕にはその原因を測定器で測るとか、不具合原因を分析・解析計算したりして、設計上の不良原因を見抜く力がありませんでした。
両親には、高額なおこづかいを無駄にしてしまい、自責の念で一杯でした。

3. ホーマー 二石レフレックス・ラジオ キット組み立てへの挑戦

中学一年になると、閉店した後、新装開店したその模型店で二石レフレックス・ラジオがそれほど高くない価格で買えました。(本当は閉店ではなかった。^^)
これは、はんだづけを終えると無調整で全く難無く放送を受信できました。アンテナ無しでTBSラジオや文化放送を毎日楽しく聞きました。

同じく中学1年に、初歩のラジオ誌の広告にある通信販売で、サトー電気さんから部品を買うことを覚えました。少額定額小為替というものが郵便局に売っていて、それを同封すれば、高価な現金書留を使わなくても普通郵便で部品を購入できることを知ったのでした。

その後、FMワイヤレスマイクの挑戦へ進み、見えない電波の不思議さの虜となり、たくさんの電気回路を自作しました。

最初は初歩のラジオに掲載されている回路図が読めず、回路図に合わせて部品を配線するやり方がわかりませんでした。

友達が回路図が読めると言っていたので、自分が読めないのはいけないとあせって、必死で回路図の読み方を自分で独自に考えました。
誰も周りに教えてくれる人がいなかったというか、就職後も今でもず〜とそうなのですが・・・。

4. ゲルマラジオへ再挑戦

この時僕は若干スキルアップしていて、ゲルマラジオなどどうでも良くなっていました。

部品がだいぶたまってきていて、ありあわせのバリコンとバーアンテナを使ってSD34か1N60か忘れましたが、空中配線でバーアンテナの周りの部品配線を行うと、難なく放送が受信され、受信できてあたりまえという感覚でした。(おそらく中学3年時。)

ところが近年になって、spiceという優れた開発ツールが、現実の回路の動作を極めて高精度に計算で再現し、パソコン画面で結果が見られる状況となり、当時のゲルマラジオ、スーパーヘテロダインラジオを実現しようとすると、特にスーパーヘテロダインラジオがうまく実現できないことを知りました。

そこで、再度、設計手法を根本から見直し、設計手法を再構築する必要性があるという課題意識を持つに至りました。

現在では、特に国内の場合、数学、ハードウェア設計、電子工学教育の立ち遅れは先進国の仲間入りが難しいのではないか?という危機感を持つに至り、このまま何もしないと国内の電子産業は消えて無くなる、なんとか立て直しをしたい、と個人的には思います。(ソフトウェア設計はそこそこうまく行っていたと思っていましたが、やはり世界を見るとかなり遅れているようです。)

僕がこうした古いが現在でも多く使われている回路へこだわるのは、おそらくその古い時代から、ただひたすらに膨大な時間とコストの浪費を伴う試行錯誤に陥り、論理的思考を避け、設計手順を何も知らずに、部品定数をあてにならない書籍情報と経験を信じ、理論的に考えれば成功する見込みの無いものに対し、長期間の無駄な実験な実験を繰り返す結果に陥っていた国内の設計文化を改善したい思いがあるからです。

あまりににも長すぎた自分の失敗経験と、今だに誤りが繰り返され一向に改善されない国内の多くの主流専門書籍と、ネット上の論理ミスの膨大さに衝撃を受け、僕も含めて反省する必要があると思ったのです。

何故米国ではspiceが1970年代に開発されていたのに、日本で僕達はいったい何をやっていたのだろう、何をするべきだったか、生徒・学生は何を教わるべきだったか、先生方は何を教えるべきだったか、何を教えられなかったか、どういう視点や展望が足りなかったのか、これから何をすべきか等々・・・。






2015年9月22日火曜日

三角波の発振回路(オペアンプ LT1359)

オペアンプLT1359を使った三角波発生をテストしました。

(1)0.35秒後に発振を開始するケース


何もkickせずに、シミュレーションの終了時間を0.35秒以内の短い時間に設定すると、発振はおこらないままで、それ以上の終了時間を指定すると発振が始まりました。


(2)計算刻み時間を100nSと短くするとすぐに発振するケース



計算刻み時間を短く100nSにするとシミュレーション終了まで計算時間が長くなりますが、最初の時刻0Sから発振しました。

(3) kick するとすぐに発振するケース



.ic directive で、out端子の初期電圧条件を0[V]にすると、すぐに発振を開始しました。なので、100[kΩ]の弱いプルダウン抵抗で0[V]の初期化を試みましたが効果は無し。10[kΩ]では、三角波の先端が丸まるので、これは良くないようです。

(5) 5 秒走らせると振幅が乱れる。


この原因は現在わかっていません。


(6)ネット記事上にあった矩形発生回路に積分器を接続する構成例(多分NG設計法)


上記の回路方式では、三角波形は得られず、矩形波が歪んだ形になりました。



(6)の設計法は、いかがなものか、疑問が残ります。


(7)別の設計法 (ネット記事から引用)


この設計法ではうまく三角波形が得られました。

約3[KHz]の綺麗な三角波です。




応用:アンプの直線性を見るために、三角波発振器を入力信号に使うと、サイン波を入力するよりも歪の有無がわかりやすくオシロに出ると思います。


2015年9月21日月曜日

【性能比較】低周波発振性能はトランジスタ対オペアンプLT1359 軍配はどちらに?

(1)2SCR372の低周波サイン波発振 過渡解析結果


発振波形は綺麗で十分な実用レベルですが、FFTを見ると高調波成分が見えます。トランジスタモデルは製造メーカ出展と思われ、LTspiceに組み込まれたライブラリに基づいています。

(2)2SC1815の低周波サイン波発振 過渡解析結果



(1)と同様に、発振波形は綺麗で十分な実用レベルですが、FFTを見ると高調波成分が見えます。トランジスタモデルは製造メーカ出展では無く、出処は不明です。

2SC1815は高性能汎用トランジスタですが現在は生産中止で新しいトランジスタに世代交代されていると思われます。


(3)オペアンプ LT1359の低周波サイン波発振 過渡解析結果


ここまでスプリアスの少ない純度の高い発振出力が、ここまで高い電圧で出力できるとは、驚異的性能が見られます。
トランジスタに比較すると勝負にならないほど発振波形の純度の高さで大差をつけ、このオペアンプの圧勝という結果です。



オペアンプ LT1359 の増幅性能テスト(高性能)

高精度オペアンプ LT1359 の増幅性能について、反転増幅回路、非反転増幅回路の性能をテストしました。

(1)非反転増幅回路の過渡解析


電圧利得10倍(20dB)に回路定数を設定し、2[MHz],10[mV]の微小なサイン波電圧を入力し、非反転増幅回路に入力すると、たいへんクリーンな出力サイン波90[mV]が得られました。
スプリアスが極めて少なく、このオペアンプの驚異的リニア増幅性能が得られています。これだけの美しい出力はトランジスタアンプでは到底無理ではないでしょうか。

利得は周波数2[MHz]あたりから減少が起こるので100[mV]に僅かに達しない90[mV]です。



(2)AC解析
利得は設計通りの20[dB]で2[MHz]あたりまでほぼ完璧に平坦な特性です。利得の減衰曲線、位相の変化曲線も非常に美しい特性で、大変優れた性能のオペアンプです。

(3) 反転増幅回路の過渡解析
 (1)と同じ入力条件で、反転増幅回路の電圧利得を10倍(20[dB])に設定し、過渡解析しました。


非反転増幅回路と同じように、大変優れた直線性を持ち、スプリアスの少なさは脅威的です。

(4)微小入力電圧の限界性能を見る

このように優れたこのオペアンプがどこまで小さな微小信号まで増幅できるか、限界の最小入力電圧を調べました。


1[uV],2[MHz] が限界の増幅可能な電圧値と出ました。大変な高感度、高品位アンプです。


トランジスタ式差動アンプ(その1)

高い増幅利得と位相が反転しない出力と、位相が180度反転した出力を同時に得られる差動アンプをテストしました。

(注意:この例はシミュレーションがうまくいっていない部分があります

                シミュレーション用回路に設計の不具合TR modelに不具合が見られます。)

(1) 過渡解析


波形の歪の少ない出力が、位相0度、位相180度反転のペアで得られています。ここでは両者の振幅電圧に若干のバランスのずれが見られますので課題となりました。

Oct.24, 2015 追記:
ウェブ上で参考にしたLTspice入門記事の回路記事をそのまま再現しましたが、設計上、少なくとも次の問題があると考えます。

①2つのTrのベースの入力インピーダンスは同じである必要がありますが、ベースがインピーダンス0である電圧源に接続されています。これでは、入力インピーダンスのバランスが崩れてしまいます。この入力回路構成では、差動入力が正しく出来ません

➁Tr1,Tr2はエミッタに定電流を供給することで、Tr1,Tr2の差動増幅動作を行わせるのが良く知られた従来方式です。対し、参照した回路は、定電流回路が抵抗で簡略化されています。

➂ 下の(2)項で書いていますが、インターネット上に日本のトランジスタ名称で出処のわからない正しくないシミュレーション結果が出て来るTrモデルパラメータが多数出回っています。これらを鵜呑みに信用して使うと、期待する結果が得られませんでした。日本の業界ではspice設計文化が浸透しているかどうか不明になっています。

日本国内で市販されている電子回路設計専門書の技術内容が古すぎて、時代遅れで使えなくなっています。現場の技術者は忙しいのでライタがいないのかもしれません。


(2)利得・位相特性


位相が0度で広帯域周波数で一定ならば理想的なのですが、この結果は良すぎます
通常は、周波数が上がってくると利得が落ちて、位相ずれも大きくなってくるので、このシミュレーション上で何か設定した条件(少なくともTRモデルは出処が不明)に問題があると思われます。

Feb.25,2017
日本では、エミッタ側で定電流電源に電流を吸い込ませる回路の紹介が多くあります。
対し、検索を英語圏にすると、エミッタ抵抗一本の回路が多数見られます。
上記回路は、エミッタ側抵抗がさらに2本で分岐し、抵抗値の誤差で利得変化が出やすい回路構成にも見えます。
アンプ利得も大きいので、TR特性誤差が出やすいかもしれず、この回路には注意が必要と思います。
この記事以外にもネット上に信頼性や再現性が確認できない入門教育情報がかなり多数ある印象を受けています。

Jun.27,2017
インターネットの教育記事に日本語の記事で「LTspice入門」と題するものがあります。
アクセス数が大変多く、検索エンジンの上位にランクされてきます。
その内容を検証した結果、深刻な設計不具合が大変多数発見され、デバイスモデルも不具合があり、設計思想全体もおそらく戦後直後の内容で、現代では全く使えない内容になっています。(要するにデタラメです。)
学習中の人は、間違った教育に騙されないように、要注意です。修正に時間を奪われます。


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JETを使った正弦波発振回路/設計不良の修正

JFETを使った正弦波(サイン波)発振回路をテストしました。

(1)大きな振幅電圧の発振出力電圧


ネット上で参考にした回路には1MΩの抵抗がゲートから接地されており発振しないため、同ゲート抵抗を除いたところ発振しました。

発振周波数は約1.7MHzで振幅電圧が±6Vと大きな振幅になりました。発振開始時間に遅れがあります。これは実際の電子回路では半導体内等の熱ノイズなどが引き金になってもっと早く発振が始まるという説を聞いています。

(2)時間軸を短時間にして波形の形を見る



このテスト条件では、サイン波の形は歪の少ない綺麗な波形で、FFT結果も良好なスプリアスの少ない周波数成分となりました。

このLC発振回路は、時間経過や温度で周波数が少し変動する欠点がありますが、近年までは温度補償という技術でコイルに空芯コイルを用いたり、コンデンサに温度係数の異なるものを組み合わせる等、多くの努力を要して通信機にもたくさん使用されていました。

現在の応用では、発振器の周波数安定度に極めて高い高精度と、発振信号の高い純度が求められるようになっているため、PLL発振器、DDS信号発生器が多く使われるようになっています。
また、SDR(Software Defined Radio)の実現では、発振周波数や位相をマイコンで制御するのが容易かつコイルやコンデンサも不要あるため、サイン波ではなく、矩形波(クロック波)発振器が多用される流行の流れが出てきています。

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