2017年6月7日水曜日

EHアンテナの集中定数による特性計算結果

EHアンテナは、波長に対して十分に小さなアンテナ素子であるため、集中定数でその電気的特性は近似計算できるとの考え方により、AC特性と、過渡特性を、LTspiceで計算しました。

その結果、給電点のインピーダンスは大変高くなり、送信機からのRF電源の電力供給をほどんど受けつかない特性があることが分かりました。


図1. EHアンテナのAC特性 計算例 (7MHz)
給電点のインピーダンスが、同調周波数 7MHzで最も高くなるようにしたところ、著しくその値が高くなり、送信機側の高周波電力を殆ど受け付けない特性になりました。

21MHzにも同調点が現れ、こちらはインピーダンスが大変低くなるものの、70%程度の電力が高周波抵抗成分で発熱し、高周波電力が熱に変換されることが予想されます。


図2. EHアンテナの過渡特性 計算例 (7MHz)
この計算条件では、入力電圧の約4倍の電圧の昇圧が起こり、マグネッチック・ループに見られるバリコン同調部での空気放電は起こりにくい条件があることがわかりました。

現在のところ、性能がダイポールの90%に及ぶという計算結果は再現できていません。

この例は単に計算の一例に過ぎず、実動作性能は、アンテナの実装状況で大きく変化することは無いとは言えませんが、事前の予測計算により、長時間の実験をするか、しないか、概ねの判断ができるかもしれないと思われます。



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2017年6月2日金曜日

無調整型水晶発振回路の不安定発振動作、高調波歪み発生現象とその解決法

無調整型水晶発振回路は、従来より長い間知られたもので、無調整で発振するので、安定した周波数で当然のように安定して発振し、綺麗なサイン波(正弦波)を生成すると期待されており、不安定な発振動作や高調波歪みが発生する現象に言及された例を見ない。

ところが、条件によっては、以下のような不安定な発振動作が起こり得ること、また大変歪んだ発振波形で高調波歪みが多くなる現象が出る可能性が、LTspiceの計算により示された。



1. 無調整型水晶発振回路の不安定発振動作と高調波歪み発生現象

図1.1 無調整型水晶発振回路の不安定発振動作 発振開始タイミングから発振初期

5V側の波形は安定しているが、下側の波形がだいぶ振幅が乱れている。
FFT解析では、高調波歪みも多い。

このような現象は、LC共振回路を出力負荷に持たせる水晶発振回路では起こらないことをLTspiceと実機測定でも良く見てきた。

図1.2 無調整型水晶発振回路  発振中の不安定動作

発振開始後も、波形がところどころ発振がと切れるような割れる波形が見られる。

水晶モデルがおかしい、計算刻みが大きいのではないか、とも考えられたが、
計算刻みを細かくし、または水晶モデルを変更しても、現象が改善しない。


図1.3  無調整型水晶発振回路  発振中の拡大波形


このように、時間幅を大きくすると、正弦波のような丸みをもった波形ではなく、クロック波と正弦波の中間にあるような歪んだ波形で、高調波歪みの電圧成分レベルが高い。

この無調整型発振回路は、VXOと呼ばれる水晶発振回路にも多用されてきている。
このブログの過去記事で、その高調波歪みが発生する可能性を、計算で示した。


図1.4  水晶モデル
使用した水晶モデル。
ATカットモデルの適正なパラメータにしても、現象は改善されない。



2. 解決方法

現在、解決方法として、2つの方式が提案され、計算は成功した。

その解決方式では、大変優れた高純度の正弦波がLC共振回路無しで、かつ振幅電圧が無段階にレベル調整できて出力できることが判明した。

世界のブレインには驚かされることが多い。

水晶メーカでないと、水晶振動子のパラメータ測定は難しい。
スペアナは高価なので利用できる環境は用意できないことも多い。
このため、気をつけないと、スプリアスの多い発振に気づかない可能性がある。


関連記事:

 LC共振回路を負荷とする水晶発振回路では、上記のような発振電圧が乱れる現象は出にくい。VXO発振回路は、無調整型発振回路が使われることが多いので、発振の安定度とスプリアスに注意が必要という結果となったので、実測による歪み特性、波形測定は重要と思われる。

トランジスタによる水晶正弦波発振器の設計 (14MHz)


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2017年5月24日水曜日

BJTトランジスタを使ったAMコレクタ変調回路歪み特性の計算評価と 実験経験との比較検証

BJT トランジスタを使ったAMコレクタ変調回路歪み特性の計算評価と実験経験との比較検証

[概要]
従来式BJT トランジスタを使ったAMコレクタ変調回路は、マイナス変調や、変調が浅い
現象が発生しやすいことが実験的に知られている。

この課題を解決する手段として、「ファイナル・トランジスタ前段のドライバ段トラン
ジスタに浅く変調をかけ、終段トランジスタに深く、2段式に振幅変調をかけると良い。」
という設計法が、長い間言われて続けている。[※1][※2]

別記事では「2段式コレクタ変調」の計算式に従う場合、変調歪みの発生が避けられない
ことを示した。

この計算結果をより高精度に数値化するため、この設計法の再現性と、信頼性の度合い
について、LTspiceを用いた実際の回路モデルに適用し、解析計算結果を以下に評価した。

ここでは、同じ課題の存在と、同課題の現象発生の再現性が高いことが、LTspiceでの
数値計算でも再確認でき、数値計算上も裏付けられたことを記述する。

合わせて、計算結果と実験結果の整合の度合いを比較し、コレクタ変調方式の電気的特性
上の解決できない課題の存在を立証した。

1  一段式 終段コレクタ変調回路のAM変調特性と歪み特性の計算

図1.1  (一段式)終段コレクタ変調 広帯域FFT(対数表示)

振幅変調を浅く抑え、ベースバンド信号電圧を低めにスイングすると、AM変調波の包絡線

は1KHzのなめらかなサインカーブに見える

広帯域で見たスプリアスは比較的少ない。

図1.2  (一段式)終段コレクタ変調 狭帯域FFT(対数表示)

一見奇麗に見える浅いAM変調波でも、キャリア近傍周波数を、対数表示でみると、

AM変調波の歪み成分の存在がよく見えてくる。

BJT TRが、理想的アナログ乗算器として動作すれば、これらのスプリアスは理論的に
皆無になるが、現実のBJT TRでは、そのような理想的アナログ乗算器は一個のTRでは
実現できない。

BJT TRの非直線増幅特性が、理想的アナログ乗算器の近似特性から外れるため、
こうした変調電圧の歪みを発生させる原因になっている。


図1.3  (一段式)終段コレクタ変調 狭帯域FFT(対数表示) 変調の深さとサイドバンドが広がり-1
図1.3のように、パラメットリック解析して、キャリア近傍の周波数のスペクトラムを見ると、
変調が深いほど、ベースバンド高調波のサイドバンドが広がるスプリアスの広がりと
歪みの電圧レベル上昇がわかる。

図1.4  (一段式)終段コレクタ変調 狭帯域FFT(対数表示) 変調の深さとサイドバンドが広がり-2
図1.4は、図1.3の周波数軸横軸を拡大して、ベースバンド1KHzの高調波の広がりを見たもの。


2  二段式 終段コレクタ変調回路のAM変調特性と歪み特性の計算

図2.1  2段式コレクタ変調 広帯域FFT(対数電圧表示)

AM変調波は、出力電圧変調波(緑)の谷が深くなり、一段式コレクタ変調(図1.1、図1.2)

より、見かけ上深い変調がかかる波形が見られる。

しかし、AM変調波電圧の包絡線は、1KHzサイン波の形が崩れ、歪んでいることがわかる。

ここで、さらに低周波ベースバンド信号の振幅電圧幅を大きくすると、変調波形の谷が
より深くなるが、包絡線はサイン波1KHzの形の崩れがさらに大きくなり、変調波形の
歪みが大きくなる。

この方式には、「アナログ乗算器を2段直結する」という基礎的な論理設計エラーが存在
する。

アナログ乗算器を2段直結すると、二段目のアナログ乗算器で、ベースバンド信号の2倍
高調波が発生し、その結果、AM変調波の包絡線に歪みが現れる。

このため、原理的に、この回路では変調波の歪みの発生を避けられない。

広帯域周波数で見たFFTでは、低周波領域の高調波が大きくなっているが、この低周波
成分はアンテナからはバンドパス特性により大きく減衰するので、送信されない。

図2.2  2段式コレクタ変調 狭帯域FFT(リニア電圧表示)

キャリア近傍のスプクトルをみると、ベースバンド1KHzに対する第二高調波2KHzが

見られ、変調信号が明らかに歪んでいることがわかる。

高調波歪み成分の存在は、リニアな電圧表示のFFTでは見えにくい。

図2.3  2段式コレクタ変調 狭帯域FFT(対数電圧表示)

図2.3は、前の図2.1、図2.2と同じ過渡解析で、出力信号キャリア信号近傍のスプリアス

電圧を、対数表示で見たものである。

キャリア近傍のスプクトルをみると、ベースバンド1KHzに対する高調波が多く見られ、
変調信号が歪んでいることが良くわかる。

対数表示により、高調波歪み成分の存在がよく見える。

第二高調波2KHzは、基本ベースバンド1KHzに対し、-20dB電圧レベルが低い。

FFTには、キャリア周波数周辺に、サイドバンドのスプリアスが広がる現象の発生が
見られる。

この歪み特性は、通信機や放送装置には許容されない特性かもしれない。

こうした歪みを許容できる簡易な用途、省電力の玩具等には応用可能性が残るかも
しれない。

この用途に適用できる判断は、個人の感性に依存する性質があるので、
判断結果は、人によりばらつくと考えられる。

従来までの二段式コレクタ変調は、基礎的な設計ミスを含んでいるので、
使う場合は、その欠陥特性を理解しておく必要があると考える。


3 実験による検証

実験によるシミュレーションの確からしさの確認には、上記の回路を製作してデータ測定
し、そのデータ一致が見られれば、上記コレクタ変調方式が不具合を起こし、変調を深く
するほどスプリアス歪みの増大特性を立証できる。

しかし、正常に期待動作できないことの立証に、コストと時間をかけるのは、これまであ
まりにも長期の(少なくとも1970年代ころから今まで)失敗経験を重ねている実績情報から
判断すると、もはや得策とは考えにくい。

(理屈でできると分かれば、実験をする価値があるが、理屈でできないとわかってしまう
と、実験を行うことへの産業上のメリットが失われる。)

妥協策として、ここでは、既に過去の実機実験で、経験的にわかっている事実と比較し
た。

・既に世の中の過去の実験例で、真空管ではうまくいっていたプレート変調を、単にトラ
ンジスタに置き換える発想による、トランジスタを使ったコレクタ終段変調回路では、
マイナス変調か、浅い変調になったという報告が、ネット記事にも多く書かれている。

・製品 RJX-601 では、1W送信モードではプラス変調になり、3W送信モードではマイナス
変調で変調信号が浅く聞こえる実験事実を確認した。

・実機実験: 2SC696 - 2SC517 C級バイアスアンプの実験では、すべてマイナス変調と
なり、最大出力は2Wを下回ることを確認した。

・実機実験: 2SC696 - 2SC517 でAB級バイアスアンプの実験では、極めて稀にプラス
変調となるが、最大出力は2Wを大きく下回り、0.2W程度でプラス変調となったことが
ある。

・AB級バイアス電流調整、実験中に過大なコレクタ電流が流れ、2SC517が多数、
恒久故障に至った。

・実験による損害金額が大きく、期待動作できる見込みが見えないので、実験を中止
した。

・代替方式として、真空管S-2001Aを終段菅とするプレート変調を構成した回路では、
問題なくAM変調がかけられることを実験で確認した。(リニアアンプ無しで出力5W)

・代替方式として、SN76514Nギルバートセル乗算器内蔵ICを利用した回路では、問題
なくAM変調とDSB変調がかけられることを実験で確認した。(リニアアンプを利用し出力9W)

・理論的に不可能と予測計算される方式は、電気回路の方程式の数式であらかじめ証明
きるので、そうした短時間のAM理論を理解するだけで、長期・長時間作業の迷宮から
脱出できる。
また、新しい設計文明への道が開ける、と考えた。[※3]

[※1]USでは、3~8石規模のギルバート乗算器が1968頃発明され、その後IC化された。
これは良好なアナログ乗算器特性があり、VHF程度まで使える。
SN76514N,SA612,NE602等は、ミキサーICとして知られているが、中身がギルバート乗算器
であることは、国内に説明する書籍例が見られず、ブラックボックス的理解の模様。

国内では東芝、JRCが同機能のICを製造しているが、US特許を使用しているかもしれない。

[※2]日本では家電メーカがRJX-601で同方式を採用、大ヒット商品で一世を風靡し、
他通信機メーカも一時期だけに限定し、同方式を採用。

TRIO/Kenwood社がTS-600で低電力変調方式を採用後、メーカ側の流れは大きく変わり、
終段コレクタ変調式の製品は無くなり、低電力変調方式へ移行した。
(通信機業界では、事実上、コレクタ終段変調式が採用は無くなった。)
家電メーカは通信機産業から撤退。一部の通信機メーカのみが長足の技術進歩を達成
した。

[※3]一方、国内の通信工学、専門書籍への設計手法伝達のフィードバックが行われない
まま、特定のメーカ外側にいる、一部のプロ、先生、出版社、その書籍、学生、生徒、
一般趣味人らが、技術発展からとり残されたが如く、過去の誤った設計書籍から得る
知識と先入観、言い伝えに不覚にも騙され、不具合発生の再現を繰り返す迷宮に入って
いる事例が続いている模様。


4  まとめ

・AMコレクタ変調について、国内でとられてきている終段コレクタ変調の設計法では、
出力されるAM送信波形に歪みの発生するが、歪の程度は異なるものの、BJT TRがアナロ
グ乗算器に近似できない非線形増幅領域について、この現象を避けることは不可能
ある。

500KWものAM中波放送用にも実用に使えた真空管のプレート変調を、単純にトランジスタ
に置き換えようとする設計思想は、変調がうまくかからない不具合現象が、実回路でも
再現性良く起こるので、この設計思想は、ずいぶん過去に破綻していたことが公知で
あったと推定される。

不運にも、インターネットでは、その不具合を起こすコレクタ変調回路を、現在でも沢山
参照できる。それらの記事と過去の書籍には、AM変調電圧式の記載と説明が無いこと、
変調の不具合現象発生の記載がないのが共通点として見られる。

・一段式コレクタ変調は、浅めの変調では歪みが少ないが、変調を深くするとトランジ
スタがアナログ乗算器に近似できない非線形増幅領域での歪みが増大して発生する。

・二段式コレクタ変調は、一段式コレクタ変調に比較し、変調がより深くなる特性が見
られるが、ベースバンド信号の2倍高調波歪みの発生により、包絡線がベースバンド信号
を線形に維持できない歪が見られ、これはこの方式上さけられない特性で、設計前に
予測し、回避可能な論理設計上の基礎的不具合がある。

・C級アンプがAM変調送信機に使えるという国内の定説は、実験およびspice計算に
ついて、どちらも定説が説明するAM変調動作を再現できなかった。

また、この定説は、
AM変調電圧の計算式 V(t)=Vc・sin(ωc*t)*{Vd+*x(t)}
に対し、論理的不具合を起こす考え方となっている。

なぜこの定説が繰り返されるのか、その原因は、現在でも解明されていない謎となって
いるが、学校の理科の実験教育で、理論計算値と測定値が合うかどうかを見る、合わなけ
れば、その原因を考察し、理論修正や測定誤差評価方法を考える、先進国に見られる実験
と測定による理論の立証主義が、現在でも教育されていないことが関係しているのかも
しれない。

Rev.0.1: May, 25, 2017
図1.3,図1.4 と説明追加:サイドバンド・スプリアスの広がりと変調度の関係説明

2017年4月23日日曜日

ヘンテナのSWR調整方法を計算で求める(ヘンテナの謎を解き明かす)

50MHz(6mバンド)用アンテナとして人気のある「ヘンテナ」を、「モーメント法」[1]に基づくアンテナ・シミュレータMMANA(Copyright by Mr.Mori/JE3HTT)を使い、その謎の解明を試みました。

課題:
(1)ヘンテナを作ったが、SWRが送信の実用範囲と言われている1.5以下に下がらない。
(2)給電エレメントをずらしても、SWRの下がる位置が現れない。
(3)そもそも、どの位置に給電エレメントを位置づけるのか、同調周波数と給電エレメントの配置場所があらかじめわからない。
(4)使える周波数の帯域幅がわからない。
(5)どうみても3〜5エレ八木と同等の利得が得られるという噂は本当なのか。


1. マッチング・エレメント位置とヘンテナの電気的特性の計算データ

「ヘンテナ」の特徴、優れている点に、長方形ループ(全体長=2λ)の形を変化させずに、給電エレメント位置をずらずだけで、SWRが1.5以下の送信用の実用範囲に入るというものがあります。
項番#4に示した、給電エレメントを、それぞれループ下側から、95cm,90cm,85cmと5cm間隔で3点を取り、その電気的特性を計算しました。
その結果は以下の通りです。

Hentena Tuning  
Stab   L     C     Q     f0         BW     SWR at 50.1MHz    Z(Ohm)
95cm 7.2uH 1.5pF 29.4 49.320MHz 1680.4KHz 3.15/50.1MHz   73.40+j69.46
90cm 7.0uH 1.4pF 28.7 50.036MHz 1742.4KHz 1.55/50.1MHz   76.95+j5.68
85cm 6.7uH 1.5pF 27.6 50.755MHz 1840.1KHz 2.63/50.1MHz   79.83-j56.06

この計算結果では、確かに同調周波数 50.036MHz に、SWR=1.55 の最小値が現れました。
Qが高いアンテナで、同調がシャープになる特徴が見られます。

5cmの給電エレメント移動でも700KHz〜800KHzくらい同調点が敏感に変化する特性が出ました。
インピーダンスの抵抗成分(インピーダンス実数成分)は77Ω前後で、インピーダンスの虚数部が、給電エレメントの位置で、インピーダンス変化は主として、インダクタンス成分の変化として現れました。

給電用フィーダは、50Ωの5D2Vよりも、75Ωの7C2Vがマッチング結果が良好になることが分かりました。


2. マッチング・エレメント位置によるSWR特性の変化特性


図2.1  SWR (給電エレメント位置=85cm)

図2.1 のように、給電エレメント位置を、90cmから5cm上にずらすと、SWR同調点は、大きくずれ、750KHzくらいずれてしまい、SWR=3.15 で、これは、CW/SSB利用帯域では利用できない結果です。


図2.2  SWR (給電エレメント位置=90cm)
図2.1 のように、給電エレメント位置が、90cmで、SWR同調点は 50.036MHzで、SWR=1.55 で、これは、CW/SSB利用帯域では利用できそうな値になっています。



図2.3  SWR (給電エレメント位置=95cm)
図2.3 のように、給電エレメント位置を、90cmから5cm下にずらすと、SWR同調点は、大きく下側にずれ、750KHzくらい下がってしまい、50.1MHzで、SWR=3.15 で、これは、CW/SSB利用帯域では利用できない結果です。


以上の結果から、目的周波数に同調させるには、1cmくらいの精度で給電エレメント位置を調整する必要があり、5cm間隔では750KHzも同調がずれ、SWRは3.0を簡単に越えてしまう結果になりました。

この給電エレメントのスライド調整は、同調周波数がシャープで、大変センシティブな特性があるようです。



3. マッチング・エレメント位置によるインピーダンスの変化特性


項番#1に示したインピーダンス計算値に従った、インピーダンスの実部、虚部の変化を、図3.1〜図3.3に示しました。
インピーダンスの虚数部=0 になる周波数が、「ヘンテナ」の同調点です。

確かに、ヘンテナの同調周波数は給電エレメント位置に敏感に対応して大きく変化するという、同調点がシャープで送信可能な周波数帯域が狭くなる特性が見られます。


図3.1 インピーダンス特性 (給電エレメント位置=85cm)
図3.2 インピーダンス特性(給電エレメント位置=90cm)

図3.3 インピーダンス特性(給電エレメント位置=95cm)

4. マッチング・エレメント位置の図

図4.1〜図4.3は、それぞれ給電エレメント位置=85cm,90cm,95cmの時の、エレメント編集画面のショットを示しました。

図4.1 エレメントの編集(給電エレメント位置=85cm) 

図4.2 エレメントの編集(給電エレメント位置=90cm) 

図4.3 エレメントの編集(給電エレメント位置=95cm) 

5. 実験での検証

僕の実験では、横1m、縦3mの長方形ループで、SWRは3.0を越えてしまい、送信可能な特性は得られませんでした。
給電エレメントは、IV線3mmΦを使い、縦エレメントに5cm間隔でビニル被覆を向いた調整点を離散させてとったため、これでは、同調周波数が目的周波数に合わなくても仕方ない結果だったと思います。
「ループアンテナは送信可能な周波数帯域が広い」と教わっていたので、「ヘンテナ」も50MHz〜54MHz全帯域で使える、と実験当時思ってましたが、間違って思い込んだ可能性があります。
(良い報告ができず申し訳ない気持ちがありますが、計算と、実験結果は矛盾していないと思います。)

別記事で、「ヘンテナ」のエレメント長を最適化したものでは、横エレメント=90cmで、CW/SSBバンド向けに好結果になり、やはり、75Ωの給電線5C2Vの利用が良い、という計算結果でした。


[ Reference ]
[1] R. F. Harrington: “Field Computation by Moment Methods”, IEEE Press, New York, 1993
(Recommended)


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2017年4月22日土曜日

BJTトランジスタ1石によるAMコレクタ変調特性の基礎計算実験

BJTトランジスタ1石によるAMコレクタ変調特性の基礎計算実験

従来から良く知られているBJTトランジスタを使ったAMコレクタ変調の電気的特性について、アナログ乗算器としての特性が1石のトランジスタ構成で、どこまで出せるか、その性能限界を見極めるため、LTspiceを用いて性能評価を行った。
その結果、浅めのAM変調では、ある程度のアナログ乗算器としての性能が出せるものの、その性能や特性には限界が見られ、デバイス技術の発展した現時点でも、ギルバートセル乗算器や真空管より優位となるような性能を引き出すことは、困難かもしれないことが判明した。

1.1 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1

トランジスタ式小信号電圧増幅リニアアンプでは、トランジスタのIc(コレクタ電流)の飽和領域で、Vbe(ベース電圧)またはIb(ベース電流)の振幅をリニア増幅し、トランジスタのコレクタに接続された負荷抵抗両端に発生する電圧を出力として取り出すことで、電圧増幅を行う「負荷線を使った低周波アンプの設計法」[1]が基礎となり、その後、トランジスタ等価回路を用いた設計法、spiceに最新のトランジスタ等価回路を組み込んだ設計とSパラメータ設計へ進んだと推定される。

こうしたBJTトランジスタ小信号リニアアンプでは、コレクタ電流を飽和させた状態の負荷線(Load Line)上をバイアスポイントを中心に入力電圧/電流信号をスイング移動させる。この時、コレクタ電流 Icが飽和していることが原因となり、アナログ乗算器として、入力電圧に比例した電圧変化をコレクタ側負荷抵抗R1に発生させることが、原理的にできなくなる。

これに対し、トランジスタのベースに定電流を流すと、ベース電圧を一定に固定した時、Vce電圧に比例したコレクタ電流が流れる特性になり、その直線比例関係のVce変化幅のダイナミックレンジが広がる特性が現れる。

このDC電圧でのVbe:VceまたはVce:Icの直線的比例関係が、高周波領域の電圧スイング状態でも維持され、かつ、VbeとVceの電圧周波数が三角関数の乗算結果であるところの、角周波数での加算、または減算の関係になれば、トランジスタは、アナログ乗算器として動作できることになる。

図1.1.1 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1 過渡解析結果

図1.1.1は、このようなアナログ乗算特性が出せるか、高周波キャリア 1MHz ±1[V]のサイン波をベースから入力、低周波変調信号 1KHz, 12+( 0~±1.0)[V]をコレクタ側負荷抵抗100Ωを介してコレクタへ入力し、コレクタ端子MOD-OUTから、コレクタ抵抗間に現れる電圧変化出力の特性を見たものである。

v(MOD-OUT)の電圧は、高周波キャリア 1MHz, ±1[V]のサイン波がスイングされ、3.6V以上の象限と、3.6V未満のAM変調波に類似した信号が見られる。

しかし、よく見ると、3.6V以上の象限と、3.6V未満の象限の包絡線は、それぞれ位相が90度ずれており、これは、コレクタ電圧との加算増幅または作動増幅が起こっていることを意味するので、AM変調波は生成されていないことがわかる。

図1.1.2 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1 キャリア周波数1MHz近傍のFFT解析結果

この現象は、図1.1.2.のFFT解析結果を見ても、キャリア周波数1MHz近傍には、999KHz, 1001KHzの変調波は、ほぼ0Vに近く、やはり、無変調状態であることがわかる。

このように、ベース定電流方式-方式1では、三角関数による電圧の乗算による位相または周波数変換動作がおこらない特性があるために、アナログ乗算器の特性は出せず、よってAM変調は不可能であることが判明した。


1.2 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式2 過渡解析

前述の1.1ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1のベース定電流源をVcc側から2mAベースへ流しこむ方式にすると、変調出力電圧に変化が現れる。図1.2のように、6~10.5V側の象限にAM変調波とよく似た波形が現れ、-2V~-3V近辺にAM振幅が抑圧されたようなマイナス電圧が現れている。

図1.2 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式2 キャリア周波数近傍 FFT解析

この変調波のFFT解析を見るとキャリア周波数近傍のスペクトルで、変調度 30~40%程度のAM変調がかかるように改善しているようにも見える。


1.3 ベース定電圧バイアス制御式コレクタ変調

前述の1.1及び1.2について、ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1/方式2のそれぞれに、Vcc=12Vを抵抗R5, R6で一定のバイアス電圧を与え、コレクタ電流のアイドリング時の値を、コレクタ電流の飽和してない動作領域に設定する。

図1.3 ベース定電圧バイアス制御式コレクタ変調 過渡解析とキャリア周波数近傍のFFT解析

この方法では、前述1.2ベース定電流制御式コレクタ変調-方式2と類似した波形が現れる。
この方式でも、変調波のFFT解析を見るとキャリア周波数近傍のスペクトルをみると変調度30~40%程度近くのAM変調がかかるように変調動作の特性改善が見られる。


1.4 ベース定電圧制御式コレクタ変調-共振LCコイル負荷式

前述1.3 ベース定電圧制御式コレクタ変調の抵抗によるコレクタ負荷を、455KHz IFT 同調コイルに交替し、同コイルの2次側から出力電圧を取り出すと、プラス電圧とマイナス電圧の象限が0Vの軸に対して、対称な形となるAM変調波が得られる。

図1.4 ベース定電圧制御式コレクタ変調-共振LCコイル負荷式 過渡解析

波形が歪まない程度のAM変調波形にするには、コレクタに与える電圧振幅を一定以下に抑える必要があるので深い変調はかけられない。このため、放送、通信機用途の実用性には無理があるが、回路構成が簡素で安価であるため、おもちゃの小型トランシーバや教育用送信機実験等の簡易な用途にはある程度の実用性があるかもしれない。


1.5 ベース定電圧バイアス制御式コレクタ変調-ダイオード通過式

前述1.3 ベース定電圧制御式コレクタ変調の抵抗によるコレクタ負荷から、0.1uF シリコン・ダイオード1N4148からR4=1MΩで出力を取り出しても、プラスの電圧とマイナス電圧の象限が0Vの軸に対して、対称の形となるAM変調波が得られる。

図1.5 ベース定電圧バイアス制御式コレクタ変調-ダイオード通過式 過渡解析とFFT解析

図1.5では、波形が歪まない程度のAM変調波形にするには、コレクタに与える電圧振幅を一定以下に抑える必要があるので深い変調はかけられない。

この方式は、コイルを使わずに、OPアンプによるBPFを追加構成できるので、IC集積化に向いた構成となれるメリットがある。放送、通信機用途の実用性には無理があるが、回路構成が簡素で安価であるため、おもちゃの小型トランシーバや教育用送信機実験等の簡易な用途にはある程度の実用性があるかもしれない。

(ただし、IC集積化は既にギルバートセル乗算器で随分昔に実現済みで、かつ電気的特性もそれがずっと優位であるため、1.5の方式が特に優れているわけではない。あくまで簡易用途の制限が伴う。)


以上の結果から、汎用小信号用BJT トランジスタ一石だけで、どこまでアナログ乗算器として動作できるか、2N3904を実例に計算した結果、その限界が見えてきたようにも考えられる。

現在の半導体技術でも、BJTトランジスタ一石だけで、真空管やギルバートセル乗算器を上回る性能を出すことはその電気的特性からみて難しいかもしれない。
デバイス製造技術の向上で、将来は、よりダイナミックレンジの広いリニアリティのアナログ乗算器特性をもつデバイスがでてくるかもしれないが、現在のデジタル化の時代流れでは、各種変調方式は、ADコンバータ、DAコンバータとDSP演算による各種変調方式が、汎用性、機能性、性能面で優位な情勢に見える。
しかし一方、これらも通信用途の大敵であるスイッチング・ノイズ、量子化ノイズ等、ノイズが発生するデメリットがあり、それらを抑圧するのが課題として現在も解決が進んでいると思われる。


[※1]通常、小信号電圧アンプでは、コレクタ電流が飽和した領域で、負荷線上にアイドリング時のバイアス中心ポイントを設定し、リニア電圧増幅動作をさせる。

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2017年4月20日木曜日

キャリア周波数・アナログ乗算式ベースAM変調方式(仮名称)の基礎計算実験

キャリア周波数・アナログ乗算式ベースAM変調方式(仮名称)の基礎計算実験


従来方式によるベース変調方式では、出力電圧が無変調になる不具合現象が出ることは、
・実機
・LTspice計算
・数式による計算
について既に示した。


ここでは、こうした従来方式によるベース変調方式をどこまで変調動作特性を改良できるか、BJTトランジスタ1石に条件を限定してアナログ乗算器の特性を引き出せるか、LTspiceのシミュレーション計算で見積もった。


方式の変更:
・TRのベース側に、DC電圧源で底上げしたベースバンドAF信号を入力する。
・TR側のコレクタ側に、キャリア周波数となるRFサイン波を入力する。
・両者の信号をTRに入力し、アナログ乗算機能が出せるかどうか確認する。
ベースには定電流源500[uA]を入力し、TRがコレクタ電流Icが飽和しない動作領域で動かす。


結果:
入力するAF電圧が制限されるが、AM変調自体はかかる。
変調度が浅いため、実用にはならないと思われる。
近接スプリアスの発生があり、歪み信号の電圧レベルは低いが、アナログ乗算器としては歪みが伴い、けして綺麗な音質は得られない。
(BJTトランジスタ単独でのアナログ乗算動作は実用的ではない。ギルバートセル型BJT TR乗算器の特性よりも、性能は大きく劣る。)


図1. キャリア周波数スイッチング式ベースAM変調方式(仮名称)の過渡解析+広帯域FFT解析
図1.に示すように、浅くAM変調はかかっており、AF信号電圧の振幅変化に対するそれほど歪んでいないAM変調波の波形が見られる。
高帯域周波数でのスプリアス発生は、それほど酷いものでは無いが、けして良い特性とは言えない。


図2. キャリア周波数スイッチング式ベースAM変調方式(仮名称)の過渡解析+狭帯域FFT解析(V単位)


図2.で示すように、[V]単位で見ると、キャリア周辺のLSB,USB 1KHzのピーク電圧が見える。
これ以上、深い変調を与えると歪みが多くなってしまう。


図3. キャリア周波数スイッチング式ベースAM変調方式(仮名称)の過渡解析+狭帯域FFT解析(dB単位)

図3.で示すように、[dB]単位で見ると、キャリア周辺のLSB,USB 1KHzのピーク電圧周辺に沢山のベースバンド高調波歪みがの存在が見える。
アナログ乗算器としての特性を良くは出せていない。


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2017年4月9日日曜日

ヘンテナと長方形ループアンテナ(マッチングスタブ・レス型) 50MHz/6m Band 対応

1. ヘンテナ 50MHz/6m Band 対応

図1.1  ヘンテナの外観


図1.2  ヘンテナの最適化計算結果


図1.3  最適化されたヘンテナのエレメント・サイズ


図1.4  最適化されたヘンテナのSWR特性 


図1.5  最適化されたヘンテナの実効利得特性



図1.6  最適化されたヘンテナのインピーダンス特性


2. 長方形ループアンテナ(マッチングスタブ・レス型) 50MHz/6m Band 対応

図2.1 長方形ループアンテナ(マッチングスタブ・レス型) 外観


図2.2 長方形ループアンテナ(マッチングスタブ・レス型) エレメント・サイズ(最適化計算済)