2015年8月11日火曜日

PSN方式によるSSB変調信号の生成原理

PSN方式によるSSB変調信号の生成原理
                                Noboru , Ji1NZL Aug.11, 2015

PSN(Phase Shift Network)方式によりSSB変調信号が生成される原理と過程を、ブロックダイアグラム(図1)と、計算式により説明(証明)する。

図1 PSN方式によりSSB変調回路のブロックダイアグラム


1. PSN方式SSB変調器

PSN方式SSB変調器は、キャリア信号及び片側のSSB側波帯の周波数成分を除去するためのクリスタルフィルタ等を必要とせずに、SSB信号を生成する手段として知られている。

図1に示すように、PSN方式SSB変調器は、2個の90度位相シフト器、2個の乗算器(ミキサー)、1個の加算器により構成することができる。

2. 計算式によるSSB変調信号の生成過程と生成原理

音声信号は、マイクロフォン等により入力する。マイクロフォンが発生する信号電圧は、低周波数帯(20[Hz]〜20[KHz])に帯状に分布しているが、ここでは計算を易しくするために、周波数f0[Hz]の単一の周波数スペクトルとして、サイン波低周波信号電圧 

Vin = Va*sin(ω0*t) [V] … 式(1)
(ここで角周波数ω0は、ω0=2*π*f0 と定義する。)

が、入力されると仮定する。

式(1)による音声入力電圧信号 Vin は、乗算器2と、図1中、左側の90度位相シフト器へ入力する。

90度位相シフト器から出力される信号電圧V3は、Vinの位相を-90度シフトさせたものなので、

V3=Va*sin(ω0*t-π/2)
 = -Va*cos(ω0*t) … 式(2) 

を得る。


さて、図1下の局部発信器の発生する信号電圧 V1は、サイン波なので、

V1=Vr*sin(ω1*t) [V] …式(3)
(ここで角周波数ω1は、ω0=2*π*f1 と定義する。)

を得る。

次に、乗算器1の出力信号電圧V4を求める。V4は、式(2),式(3)を乗算すれば良いので、

V4 = V3*V1     
  = -Va*cos(ω0*t)*Vr*sin(ω1*t)
  = -Va*Vr*cos(ω0*t)*sin(ω1*t) …式(4)

を得る。

次に、右側の90度位相シフト回器の信号電圧V5を求める。
V5は、局部発信器信号電圧V1(式)の位相を-90度シフトすれば良いので、

V5=Vr*sin(ω1*t-π/2)
 = -Vr*cos(ω1*t) … 式(5)

を得る。

次に、乗算器2の信号電圧V6を求める。
V6は、Vin (式(1)) と、V5 (式(5))を乗算すれば良いので、

V6= Va*sin(ω0*t) * (-Vr*cos(ω1*t))
= -Va*Vr*sin(ω0*t)*cos(ω1*t) … 式(6)

を得る。

加算回路(Adder)の信号出力電圧Voutは、V6(式(6)),V4(式(4))を加算すれば良いので、

Vout = -Va*Vr*sin(ω0*t)*cos(ω1*t) -Va*Vr*sin(ω0*t)*cos(ω1*t)
   = -Va*Vr*( sin(ω0*t)*cos(ω1*t) + sin(ω0*t)*cos(ω1*t) )

ここで、三角関数の積和公式から、

Vout = -Va*Vr*sin( (ω0*t)+(ω1*t) )
    = -Va*Vr*sin( (ω1+ω0)*t ) … 式(7)

を得る。

式(7)を見ると、本PSN信号発生器の信号電圧Voutは、局部発振器の周波数f1に、入力された音声信号の周波数f0の加算された周波数のサイン波の式になっていることから、AM変調波のUSB (Upper Side Band)信号そのものであることがわかる。このようにして、本PSN信号発生器からは、SSB(USB)信号が生成される。

QED

3. SSB(USB)信号生成例

例えば音声信号としてマイクロフォン等から、周波数 f0=200Hz、最大振幅電圧 Va=10mV のサイン波を入力し、局部発振周波数 f1=10MHz、最大振幅電圧 Vr=100mVを用いると、

Vout=-10mV*100mV*sin(2*π*(10MHz+200Hz)*t)

の単一周波数スペクトルのサイン波が生成される。

一般の応用では、音声信号や音楽信号は、20Hz〜20KHzの可聴周波数領域に存在する全ての低周波信号が、SSB信号として帯状に分布して電波として生成され得るが、通信機製品では、2.4KHz〜3.0KHzの帯域の低周波を音声信号として利用している。

PSN式SSB変調電圧の生成 計算実験例(LTspice IV)


4.課題

(1)入力される低周波音声信号の全域(20Hz〜20KHz)について、90度位相シフト器を抵抗とコンデンサの集合体で形成する方法が知られているが、この90度位相シフト器は、信号処理する低周波音声信号の全域では、90度位相シフトを実現できず、対象の周波数範囲が制限される。その結果、90度位相シフト器の90度位相シフトの領域外の音声信号がおかしな音調に聞こえる現象が発生すると予想される。

(2)90度位相シフト器を抵抗とコンデンサの集合体で形成する方法では、90度位相シフトの領域内の信号の利得が一定にならず、最大-7dBまで連続的に利得が変化する。このため、音声の大きさの情報が正しく伝送できない問題(大きな声なのに小さく聞こえる等)の発生が予想される。

(3) これら(1)(2)の課題を解決する手段としてウェーバーPSN方式が考案されており、ここのPSN方式より優れた特性のSSB変調が可能になると期待される。

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