2015年6月14日日曜日

ゲルマニウムラジオが聞こえる仕組みについての解析/日本の「包絡線検波理論」の見直し

1. 無変調キャリア 600KHzのラジオ電波を受信する動作
 中波ラジオ放送局が無変調の搬送波600KHzを送信し、1960年代の古い技術資料にみられるゲルマニウムラジオ回路で受信すると、検波用ダイオードを通過した信号は、受信された搬送波と同じ周波数のサイン波が、負荷抵抗 1Mオームに現れる。


負荷抵抗1MΩ両端には、クリスタルイヤホンを接続するが、クリスタルイヤホンの抵抗値が大きいため、この回路図では記述を省略している。負荷抵抗両端に現れる電圧は、プラス、マイナスの電圧を振幅するサイン波である。古来より(私の調査では1965年以前から現在2015年まで)、検波ダイオードを通過した信号は半波整流され、サイン波のプラス側の脈流電圧が現れると考えられてきた。

しかしながら、LTspiceのシミュレーションでは、検波ダイオードの出力電圧波形は、マイナス側の電圧がカットされることはなく、出力電圧は綺麗な600KHzのサイン波が出力されている。

このシミュレーション結果が正しいならば、約50年もの間、ダイオード検波が半波整流をして脈流を出力するという考え方に誤りがあったことになる。

回路1.では、意図して出力回路のコンデンサを接続していないが、ゲルマニウムラジオではこのコンデンサが重要な検波出力動作に関わっていることが以降の記事でわかる

2. ここの回路は、1.と同一の回路で、ゲルマニウムラジオの出力電圧を、横の時間軸を長くして見たものである。













出力電圧は、±15[mV]のサイン波で、1.と同様に、出力されるサイン波は、マイナス電圧がカットされず、サイン波600KHzが出力され、半波整流動作は起こっていないこの現象も、包絡線検波動作が発生していないことを示している。


3. 1,2と同一回路で、AM変調波を受信する動作














放送局から、キャリア(搬送波)600KHzに、低周波信号200[Hz]でAM変調をかけた電波を受信した場合、負荷抵抗には、受信電波と相似した周波数波形の被変調波が現れる。1,2と同様に、ダイオードによる整流動作は起こらず、マイナス電圧側がカットされることはない。

4. この回路は、1,2,3の回路中のダイオードの向きを逆にしたものである。




負荷抵抗には、受信電波と相似の被変調波が現れる。1,2と同様に、ダイオードによる整流動作は起こらず、マイナス電圧側がカットされることはない。

3,4 を比較してみると、高周波600KHzと変調波600.2KHz、599.8KHzは、ダイオードで減衰はするが、受信した高周波信号はダイオードを貫通しており、整流動作が起こらないことがわかる。

このことから、ダイオードでは従来言われている包絡線検波の現象は起こっていないことになる。

5. ここでは、回路4.の負荷抵抗と並列に、コンデンサ0.001uFを接続した場合の、受信出力波形を示す。





出力電圧は、低周波変調信号200[Hz]が、振幅 0 〜 +6[mV]のサイン波として現れている。
従来言われてきた検波動作による脈流は出力されていない

これは、コンデンサ0.001uFにダイオードが搬送波を整流した直流電圧 +3mVが充電され、そのDC +3mVのオフセット電圧を中心として、変調波サイン波信号200[Hz] -3mV 〜+3mVが重畳され、振幅 0 〜 +6[mV]のサイン波が出力されていることを意味する。

すなわち、ダイオードの中では、搬送波信号と2つの変調波信号が貫通し、ダイオードの中で混合されて、キャリア成分がDCオフセット電圧+3mVとして充電され、サイン波の重ね合わせ、周波数変換現象が起こり、200[Hz] 変調信号のサイン波、振幅 0 〜 +6[mV]が、復調されたことを意味している。

6. この回路は、回路5.のダイオードを逆方向に接続したものである。












出力電圧は、低周波変調信号200[Hz]が、振幅 0 〜 -6[mV]のサイン波として現れている。
動作原理は、5.と矛盾せず、ダイオードの中では、搬送波信号と2つの変調波信号が貫通し、ダイオードの中で混合されて、キャリア成分がDCオフセット電圧 -3mVとして充電され、サイン波の重ね合わせ、周波数変換現象が起こり、200[Hz] 変調信号のサイン波、振幅 0 〜 -6[mV]が、復調されたことを意味している。

ダイオードの直流特性は良く知られ、専門書にもウェブ記事にも良く書かれているが、交流特性、特に高周波での挙動は、現在でも良く知られていないと考えられる。
残念ながら、現在でも誤ったままの文化が継承されている記述や説明しかみあたらない。

上記、ダイオード内部で高周波通過時に起こる周波数変換動作は、ダイオードの指数関数特性に強く関係して発生しており、2種類周波数以上の高周波電圧成分が入力された場合に、その差分周波数が現れる。これはダイオードの高周波特性の特徴であるが、何らかの不明の原因で、現在でも殆ど知られていないようである。

Noboru, Ji1NZL




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